「森・ひと・こころ 森づくりシンポジウム」

2010年1月31日、宮日会館の宮日ホールにおいて、「森・ひと・こころ 森づくりシンポジウム」が開催されました。
我らがロキシーヒルの会会長、図師さんが開会の挨拶をされました。

基調講演は、立松和平さんの予定でしたが、急遽、病気入院されたという事で、ピンチヒッターにC・W・ニコルさんが立たれ、立松さんの講演予定と同じ演題の「人の心に木を植えよう」という題でお話をされました。

ニコルさんは、3歳のときに大病を患い、心臓と体の関節が弱くなったということですが、子どものときにおばあちゃんに、「森(原生林)へ行って大きな木に挨拶をし、抱きついて『力を貸してください。兄弟になってください』と言いなさい。それを毎日続けなさい」と言われ、一ヶ月その通りにしたそうです。
そうしたら、やっと歩ける状態だった足が、森へ行くために走るようになり、木に登るようになって、一ヶ月で全く別人のようになったそうです。
また、現在持ってらっしゃる長野県黒姫の「アファンの森」の名前の元になった、南ウェールズのアファンの森(アファンとは『風が通る谷』という意味)の再生の話をされました。
それは、炭坑の街であり、ボタ山だらけで一本の木も生えていなかったアファンの森の元地の小学校に、第二次世界大戦の後、戦地からもどった3人の先生が、子ども達にそれぞれバケツ一杯の土を持って来させ、それに木の苗を植えて、10hの森づくりを始めたのがきっかけで、今では、なんと3万hの広大な森になったということです。
日本には素晴らしい自然がたくさんあるが、残念ながら目先のこと(経済的な事)のためにどんどん失われている。
森は人の心のふるさとである。木は人の心に安らぎを与えてくれる。そこを考えて欲しい。と提言されました。
その他にも、たくさんの心惹かれるお話をしていただきました。
写真はニコルさんの許可を得ていませんので、掲載しておりません。

その後、パネルディスカッションが開かれ、九州大学の興梠克久助教、NPOどんぐり1000年の森をつくる会会長の樋口信義さん、ロキシーヒルの会会長の図師哲雄さんがパネラーとして参加されました。

興梠さんは、研究者としての立場と高千穂町の林家の後継者としての立場でお話をされましたが、森林荒廃の現状として2つの問題を指摘されました。
それは、「育林放棄」と「再造林放棄」の二つです。「再造林放棄」とは主伐面積に再造林が追いついていない状況で、特に、南九州と東京の山間部に多い問題だという事です。また、最近の傾向として、再造林放棄の増大・大型化が進んでいるという事でした。
それぞれの対策として、「育林放棄」地は水源の森として手入れをして行くこと、「再造林放棄」地は自然林に戻してやる事を提案されました。
また、それらの放棄林が増えて来ている事に対する分析として、日本の育林コストが非常に高いことを指摘されましたが、それは日本の山は「生物多様性」が高く、下草や蔓などの除伐に大変手がかかる事を指摘されました。
また、宮崎ならではの現象として、杉価格が下がるほど伐採面積が増加するという、経済学的には説明がつけにくい現象を紹介され、これは、換金額を保つために、一度に伐採する量を増やさざるを得ないためであろうと分析されていました。

樋口さんは、森づくりに大切な事として、「森を作るという事は人の輪を作るということに繋がる」とお話しされました。そのために多様な生物が生きる山は大切であるとのことでした。

図師さんは、「自然には人を教育する機能がある」ということを、ロキシーヒルの青少年キャンプなどを例に挙げてお話しされました。

興梠さんは、最後に山の後継者としての立場から、森林所有者の楽しみと責務を考える事によって、山林経営の幅が広がるというお話をされました。
初期の山林経営は、山の経済的価値しか見ていなかった。しかし、今は「交流」を契機に、多くの人たちと協働で楽しみながら山に取り組む新たなステージに入ったということです。

その他にもたくさんの提案や意見をいただきました。

2010.2.1レポート