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豊かな森へ Part6 自然の恵みに想う

 宮崎日日新聞の「くろしお」にボクシング世界王者に四十五歳にして返り咲いた、ジョージ・フォアマンの「年をとることは恥ずかしいことではないと語り、再挑戦することの素晴らしさを教えてくれた」の言葉を紹介していた。
 これを見て、ある思いに勇気づけられた。
 最近ロキシーヒルに若いカップルが滞在した。彼の方は全国の自給生活をしている人々や自然農に生きがいを感じて実践している人々を半年にわたってたずね歩き、ロキシーヒルにたどり着いたそうだ。
 彼等に学ぶことは多かった。食べることから始まった。玄米食である。この玄米も自然農から生まれた無肥料無農薬で出来たものに限った。野菜は自然の力で出来た野菜となる。すべて無肥料無農薬無耕起である。そこで生まれる食べ物には命がはぐくまれていると言う。
 私は四十五年も農業を続けて居たので、彼等の言う無耕起、無肥料、無農薬で作物が出来るはずがないと一笑に付していた。
 ところがある日、宮崎からの帰りに若いカップルの彼の方、野矢君が「圖師さん本屋に行こう」と誘ったので、書店に立寄った。野矢君の紹介で、「自然農法」「わら一本の革命」(福岡正信著)をぜひ読んで下さいと言うので、買った。初めて農業を別の角度から見ることが出来た。
 この本には、「自然農法とは、自然の意志をくみ、永遠の生命が保証されるエデンの花園の復活を夢みる農法である」と書いてあり、読み進む内になるほどと、思わず納得したりした。
 次に川口由一著「妙なる畑に立ちて」という本に出合った。綾町の元町長だった郷田実さんの七回忌の時、賢治の学校で買った。
 内容は自然農について、その理念と実践が写真入りで解りやすく書いてあった。農業を長い間やっていたので、この方法なら実現出来るような気がしてきた。
 野矢君に誘われるまま、これからの生活を自然農法に挑戦してみるのも悪くないなと思った。それは自然に還る生活を試みることになるように思えた。
 今、ロキシーヒルでは、豊かな森を目指して針葉樹林(スギ、ヒノキ)を三割残して、残りの七割の土地に照葉樹林(ヤマザクラ、アラカシ、ヤブツバキ、ケヤキ、モミジ)等を植えて混交林(自然林)づくりを進めていることにもつながるような気がする。
 野矢君と過ごした生活の中で、ある時、洗濯をする場面があった。何げなく洗剤を入れようとした。彼がそばに居て「洗剤は入れないで下さい」と言うので、「何故」と問うと「洗剤は地球に良くないですよ」と言うので、あきれ返った。その時は水洗いで終ったが、チェーンソーの油は落ちていなかった。お湯を使って重曹等で落ちると言うことだった。
 もう一つは、台所の洗剤にも及ぶ。環境にやさしい洗剤があるそうだ。今、何げなく使っている洗剤も気を付けていると環境に優しいものがあると言って、今まであった洗剤が姿を消した。彼がすすめる洗剤に変わった。
 次には、化学調味料は体に良くないと言ってほとんど使わない。使うのは塩とかゴマ等自然の中から生まれるものだけ使っている。どこまで付き合えるか楽しみだ。
 こうやってロキシーヒルも賑やかになってきそうだ。緑が増えて、自然から生まれた食べ物を食べていると長生きできるかもしれない。それにしても忙しい日々になりそうだ。

「みやざき悠久の森づくり県民のつどい」体験発表より

 
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